この頃不安にとりつかれることが多く、かといってお医者さんにかかるほどひどくはないので、ひとまず何か自分でできることをやってみることにしました。いくつか書籍を調べてみたところ、ドイツの臨床心理士さんが書いた「敏感すぎるあなたへ」という本が最新の知見に基づいていて良いということなので、まずはこれを読んで、試してみることにしました。
本では主な読者として、パニック発作に悩まされている人を想定しているようです。僕にはパニック発作はありませんが、症状の発生メカニズムの説明はとてもわかりやすいものです。本の全体にわたって、語りかけるような優しい文体ですので、誰でも読めて実践できると思います。
ごく大まかな序盤の内容は、以下のようなものです。
- 無意識は計り知れない力を持っており、何が問題なのかをいつも把握しているが、そのことを意識が直接知る手段はない
- 不安やパニック発作は、無意識からの警告を無視し続けた結果である
- 向精神薬や標準セラピーは、ほとんどの場合役に立たないし、多くの場合有害である
- 人が考えたことは脳内のシナプスとニューロンによって物理的に保存される
- ネガティブな感情を繰り返すほど、脳内にネガティブな「情報ハイウェイ」が構築されるので、よりネガティブな思考に陥りやすくなる
- しかし脳には可塑性があるので、ポジティブな「情報ハイウェイ」に作り変えることは十分に可能である
著者のこの本の主張は、概ね以下の一文に集約されていると思います。
ポジティブな情報による新たなニューロンの回路は、特殊なメンタルトレーニングによってアクティブに作らなければなりません。これがもともとあったネガティブな回路より強くなれば、脳はさっそく新しいポジティブなほうを使うようになり、古いネガティブな回路は自然に消えていきます。(P.61)
そしてこのメンタルトレーニングというのが、著者の開発した「テン(10)センテンス法」、というものです。それは以下のようなメソッドです。
- 自分が人生に望んでいる物事を10個(テンセンテンス)書く
- 10のセンテンスは、5つの規則(ポジティブに、現在形で、など)を守って書く
- 毎晩寝る前にセンテンスの一つを頭に浮かべ、その状況を五感を使ってありありと感じる
これに加えて、不安やパニック発作に襲われた時に、すぐに対処するための「パターン・インタラプト」というテクニックも紹介されています。テンセンテンス法は日々のトレーニングとして取り組み、補助的にパターン・インタラプトを用いる、という使い方のようです。
ワークはまず、「自分の人生で嫌だと思っていること」と、「自分にとって素晴らしい人生とはどんなものか」を全て書き出すことから始まります。その後で10のセンテンス、すなわち「自分にとって本当に素晴らしい人生とは」のリストを作ることになります。言葉は同じですが、10のセンテンスの方はトレーニング中に五感を使って想像しやすい形にする必要があるので、最初のリストとは少し違ったものになると思います。僕は最初のリストを見ながら10のセンテンスにまとめるという流れを取りました。
そもそも10個ものセンテンスをひねり出すのは、ネガティブ人間にはなかなか大変なことでした。しかし実際にやってみると、自分のやりたいことや、夢と呼べるようなことが思っていたよりも多く発見できたのは意外でした。
僕は朝晩に瞑想する習慣があるので、瞑想時間の一部をテンセンテンス法に置き換えてみることにしました。1回のトレーニング時間の目安は20分で、五感をしっかり使うことが重要とのことなので、インターバルタイマーを4分にセットし、1つの感覚につき4分、合計20分で取り組んでみました。
実際にやることは、一言で言えば「楽しい妄想」ということになるでしょう。僕はリストの最初を「静かで、心落ち着く、自然に囲まれた場所に住んでいる」としました。なので、まず理想の家を想像して、そこで暮らしている様を五感を交えて妄想しました。あくまで妄想ですから、そこは安らぎだけがある、静かで平和な世界です。でも少なくともトレーニングの間は、確かにその理想の世界にいて、理想の暮らしをしているのです。トレーニングを終えると、ほんの少しですが、胸の中が明るくなった感じがしました。
妄想とはいえ、トレーニングには集中力を要します。このようなトレーニングにおいては、姿勢が大事になると思います。この点は瞑想と共通しているので、僕には今までの瞑想経験が助けになりました。トレーニングに取り組む方は、寝る前と言えども寝ながらトレーニングするのではなく、背筋を伸ばして、椅子などにちゃんと座ってやると良いと思います。僕は座蒲に座って、半跏趺坐で取り組んでいます。
3週間後には変化がわかるとのこと、とにかく続けてみようと思います。