Shigeru Hasegawa

印刷博物館のワークショップに参加してきた

海外からのお客さん二人を連れて、飯田橋近くの印刷博物館へ行ってきた。調べてみると、本格的な名刺などの体験講座は予約制で年に数回しか受講できないが、もっと小さな印刷物は無料公開講座としてほぼ毎日開いているようだ。お客さん達は大学のグラフィックデザインの勉強で訪日しているということだったので、活版印刷の体験はなかなか面白いのではないかと思って連れて行ってみた。印刷博物館で活版印刷を体験できるということは以前から聞いていて、個人的に気になっていたところでもあった。

無料公開講座は先着順で、事前に博物館に電話で確認したら土日はだいたい10名前後になると聞いていたので、勧められた通りに15時に開かれるコースの15分前には列に並んだ。今回並んだのは合計10人だったが、全員同じコースに参加できたようだ。

荷物を預け、インクで汚れないよう印刷博物館のロゴ入りのエプロンをつけると、工房の主とおぼしきおじさんが明るく丁寧に活版印刷の道具やその使い方について説明してくれた。活字は摩耗するので大量に必要になるため安い合金で作られていて、落としたりすると曲がってしまうとか、昔は「!」を「よだれ」、「?」を「みみだれ」と呼んでいたことなどを話を聞きながら、宮沢賢治の作品で主人公の男の子が印刷工場で落ちた活字を拾う仕事をする場面を思い出していた。あれは銀河鉄道の夜の一場面だったろうか。

今回は既にイラストが刷られたコースターに、各々がイラストの下に好きな言葉を刷るというコースだった。いろいろ迷って、友人にコースターをあげるのならシンプルな挨拶がいいかと思い、「Greetings!」と入れることにした。小さな活字を指で拾うのはなかなか難しい。拾った活字は上下反対にして組み、ネジで締めて印刷機にはめ込む。言葉を中央寄せにするには、単純に左右をスペーシング用の活字で埋めることになる。工房の主に勧められるがままに「!」の前に4ポイントのスペースを入れてみたが、ちょっと空きすぎに感じたので2ポイントに替えてもらった。今回使った印刷機は手動式のもので、ハンドルに連動してインクを塗るためのローラーと台紙を置く台が動くようになっている。小さいがとても重そうだ。ハンドルを上げるとローラーが跳ね上がって印刷機上部に塗られたインクの上を走り、押し戻すとローラーが下に戻りながら組まれた活版の上を走ることでインクが付いて、さらに台紙を置いた台が活版に押し付けられるようになっている。言葉にするとややこしいが、インクの準備は工房が既に準備してくれていたので、やることは活版と紙をセットしてハンドルを上下させるだけだ。親子の参加者もいて、小さい子供でも問題なさそうだった。

自分が拾った活字がとても鮮明に印刷されるのは、なかなか新鮮な驚きがあった。個人でこの印刷機を買って名刺などを刷っている人もいるそうで、そうしたくなる気持もわかる。いずれ本格的なワークショップも受講してみたい。

お客さん二人もとても楽しんでくれたようで、ギフトショップで3人一緒にエプロンを買って帰った。

モバイルバージョンを終了