old ragged iPhone 6

2017年10月、かれこれ3年ほど使ってきたiPhone 6のバッテリーがいよいよ劣化してきて、電源が突然切れたり満充電できなくなったりしていた。発表されたばかりのiPhone Xも気になるところではあったけど、iPhone 6に特に不満もなかったのでバッテリーを交換して使い続けることにした。Apple Store の Genius Bar を予約して訪れ、交換料金8,800円でバッテリー交換を行った。かかった時間は30分くらい。バッテリー交換後、iPhone 6はすっかり元通りのバッテリー性能に戻った。

2ヶ月後の12月28日、AppleがiPhoneのバッテリーレベル低下時に意図的にパフォーマンスを低下させていたことが公になり、批判を受けたAppleは今までよりずっと低価格でバッテリー交換を受け付けることを発表した。10月にそれまでの交換料金で交換してもらった身としては少し残念な気分にもなったが、まぁそういうものだと思った。タイミングの悪さよりも、マスプロダクトであるiPhoneはバッテリー劣化を理由に買い換える人も少なくないはずなのに、信頼回復のために安価なバッテリー交換を受け付けて、手元のiPhoneを長く使ってもらうという決断を行ったAppleへの感心の方が強く印象に残った。

そんな出来事も半年ほど過ぎて、すっかり忘れていた2018年6月8日。Appleから「iPhone バッテリーサービスリクエスト」というメールが送られてきた。なんでも昨年末のバッテリー交換価格の改訂を受けて、2017年中の価格改訂前にバッテリーを交換した人に差額を払い戻してくれるという。混雑しているのかメールからのリンクではうまく手続きできなかったが、サポートに電話するとバッテリー交換プログラム専門の部門に繋ぎ直してくれ、無事払い戻し手続きを完了できた。払い戻し金はその日のうちに送金されたようで、翌日には差額の5,600円が振り込まれていた。

iPhoneのバッテリーレベル低下時にパフォーマンスを低下させるという仕様を明示していなかったこと、また個人的には払い戻し通知のメールからのリンク先が正しく動作していなかったこともAppleの失敗ではあるが、いずれも非常に誠実な対応が見られた。そしてそれら、失敗からの信頼回復を可能にする組織づくりは一朝一夕にはできることではなく、Appleの長年に渡るユーザー体験改善の取り組みの片鱗を感じられる一件だった。