※2021年12月11日追記:中判フィルムも現像してみました。手順はこの記事と同様です。

先月、日本写真学院でモノクロ写真クラスを受講して、フィルムの現像から引き伸ばし機を使ったプリントまでモノクロ写真の一通りの行程を習いました。で、プリント(引き伸ばし)をするには暗室が要るのでおうちで気軽にってわけにはいかないのですが、フィルムの現像の方は必要なものさえあれば比較的簡単にできるようなので挑戦してみました。

現像にあたっては、モノクロ写真クラスでとったメモと、Silversaltのフィルムの現像手順を参考にしました。

概要

  1. 現像タンクにフィルムを巻いたリールを入れる
  2. 薬品やら水やらをタンクに入れたり出したりする
  3. 乾かす

簡単に言うとこれだけです。モノクロフィルムの現像は、カラーフィルムの現像に比べてかなり融通が効くらしく、ある程度いいかげんでも現像はできるようです。

用意したもの

現像用品

  • 現像タンク
  • リール
  • 計量カップ
  • メスシリンダー
  • 現像薬品の保存用ボトルx2
  • 現像液(Kodak T-MAX現像液)
  • 定着液(ILFORD RAPID FIXER)
  • フィルムピッカー
  • フィルムクリップx2セット
  • フォトスポンジ
  • 温度計
  • ダークバッグ(チェンジバッグともいう)
  • 時計
  • はさみ
  • 撮影済のフィルム
  • ネガシート

現像薬品は粉から作るタイプもあるのですが、調合がめんどくさそうなので原液タイプのものを購入しました。

現像タンクはパターソンのスーパーシステム4現像タンクで、リール2個つきです。ただ液温管理には熱伝導率のいい金属製のタンクの方がやりやすいそうです。

現像用品のほとんどはSilversaltが良心的な値段だったのでこちらで購入。現像薬品とフォトスポンジだけヨドバシ.comで購入。

現像手順

前日の夜に現像薬品をボトルに調合しておきました(その方が安定するそうなので)。現像液、定着液どちらも5倍に希釈して使います。600mlずつ作りたかったので、原液120ml+水480mlで使用液を作成。

停止液の代わりに水を使用しました。また、現像前の前浴、2回目の定着処理、水滴防止処理を省略しました。どれも必要性を感じたら導入することにします。

Kodakの現像データによれば、T-MAX現像液を使用してTRI-X 400フィルムを液温24度で現像する際の時間は4分45秒ということなので、これを現像時間の目安とします。

なお他のフィルムと現像液の組み合わせで現像する際は、The Massive Dev Chartを参考にしてください。

事前準備

ダークバッグ

  • 現像薬品を調合しておく
  • 風呂場を温めておく(冬の場合)
  • 液温調整用のお湯を沸かす(夏場なら氷?)
  • フィルムピッカーでパトローネに入ったフィルムを引っ張り出す。ダークバッグに現像タンク、リール、フィルム、はさみを入れて閉じ、フィルムをリールに巻きつけて終端を切り、現像タンクに入れ、中ぶたを閉じる(遮光する)
  • 水を張った桶に薬品のボトル、現像タンク、温度計を入れる。液温管理はこの桶の水で行う。

パターソンのリールへのフィルムの巻きつけ方は、こちらの映像が参考になりました。

現像と乾燥

現像タンクと現像薬品

  1. 現像 (時間は現像液とフィルムによる)
    現像液をタンクに入れ、最初に30秒撹拌、[50秒停止・10秒撹拌]を繰り返し、終了15秒前に現像液排出(またはボトルに戻す)。
  2. 停止 (30秒)
    水をタンクに入れ、10秒撹拌、10秒停止、10秒撹拌。水を排出。
  3. 定着 (3分)
    定着液をタンクに入れ、最初に30秒撹拌、[30秒停止・10秒撹拌]を繰り返し、定着液をボトルに戻す。
  4. 洗浄
    水をタンクに入れ、5回反転して水を入れ替え。10回、20回で繰り返し。
  5. 乾燥
    フィルム上端をフィルムクリップで留め、吊るす。フォトスポンジでムラの無いように上から下に拭う。フィルム下端にオモリになるものを留める。乾燥が完了したら、適当なコマ数で切ってネガシートに入れる。

わかったこと

DSCF0310

  • 若いコマのフィルムの上辺が少し感光している。現像タンク内での遮光が完全ではなかったかもしれない。
  • この時期に自然乾燥させるとフィルムにかなりきついカールがかかる。風呂に少しお湯を張って湿度を上げると改善した。
  • 乾燥時にフィルムの拭い方が雑だと、フィルム上に水滴の跡が残り、しかも乾燥するまで非常に時間がかかる。フォトスポンジを均一に押さえて拭う必要がある。水滴防止剤か、蒸留水+アルコールを使った方がいいかもしれない。
  • フィルムの乾燥はクリップつきのハンガー(上の写真)で十分だった。オモリは普通の洗濯バサミでいい。フィルムクリップは必須というわけではない。
  • Silversaltの記事を参考に、停止液の強度を使用前と使用後でテストしてみたが、クリアタイムに変化はなかった。ただし5本使用後はわずかにフィルムの透明度が落ちているようだ。
  • パターソンの現像タンクの蓋が固くて閉めるのにコツがいる。指が痛い。

現像を終えて

DSCF0317

今回現像したフィルムは、Kodak TRI-X 400が3本、ILFORD XP2が1本、Rollei RPX 400が1本の計5本。最初にTRI-Xを一本ずつ3回に分けて、最後にXP2とRPX 400をまとめて現像しました。XP2はカラーネガ現像できるモノクロフィルムですが、普通にモノクロ現像しても問題ないようです。

規定の現像時間(4:45)ではやや現像不足に感じられたため、2回目は現像時間を1分長めに取りました。また現像液は使い捨てにせず再利用したので、現像液の疲労度合いを考えて、以降の現像時間は30秒ずつ長くしました。すなわち

  • 1回目 4:45
  • 2回目 5:45
  • 3回目 6:15
  • 4回目 6:45

となりました。2回目以降のネガの濃度は問題ないようです。

昼の13時に始めて、洗浄まで終わったら17時になっていました。なかなか時間のかかる作業ですが、自分の手で写真を作っていく面白さがあります。最初の3回は1本ずつ現像したこと、試行錯誤しながらだったことを考えると、次回は半分くらいでできると思います。


2015/11/28 初出
2015/11/30 概要を追加
2016/03/09 リール巻き取り映像のリンクを追加
2020/06/05 表現を少し修正、The Massive Dev Chart へのリンク追加